女性には男女共通の疾患以外に女性特有の疾患があります。それらの多くは年齢、ホルモン環境、生活状況により、特有の時期に見られたり、治療方針を立てるにあたってそれらを考慮した選択をすることが必要です。また、産科婦人科疾患には思春期医療、生殖医療、更年期医療などそれぞれの時期に対応して将来を見据えた治療方針を立てることが必要な場合もあります。したがって女性が将来よくみられる症状や疾患について若い時期から、ある程度の知識を持ち、治療法の選択に迷わないようにその基準をあらかじめ明確にし、できれば回避することを考えることは女性の一生を通じて大事なことです。
たとえばホルモン環境をとってみても思春期には性機能の確立が問題となりますし、性成熟期では妊娠、性感染症、ホルモン関連疾患である子宮内膜症や、子宮筋腫、30代を過ぎると子宮頸癌や乳がんに対する対応、50代になると更年期障害、うつ状態などの閉経関連症状、閉経以後については排尿障害、骨粗鬆症などに対する対策が必要になります。これらの症状を個人が置かれた社会状況を加味して考えておくことも必要であると思われます。
最近の新聞、テレビなどを見ますといくつかの問題について風評や印象だけに基づき、医療上正しくない情報(たとえば人工妊娠中絶すると子供ができなくなるとか、流産はくせになるとか、流産は母親の無理な行動で起こるとか、子宮筋腫は不妊の大きな原因となるとか)が氾濫しています。ここでは年齢別によく起こる疾患について、最新の正しい考え方にも基づいた、診断、治療選択について述べさせていただくことにより、多くの女性がいくつかの困難を、うまく乗り切って、個々の能力を充分発揮して頂くために、少しでもお役に立つことを願っています。