[戻る]
■ 妊娠中の便秘−流早産の原因にはならず−2008.11.11

OLのA子さん(26)は現在妊娠8週だ。従来、便秘気味だったが、妊娠によりさらにひどくなった。便秘薬を飲んだら下痢気味になるので、流早産の原因にならないか不安になり、かかっている産婦人科医に相談した。
妊娠中に消化器症状を呈することはよくある。妊娠中の便秘もそのひとつだ。便通異常の原因はとしてはホルモンの変動と子宮が大きくなるための物理的圧迫などが考えられる。妊娠初期は黄体ホルモンの分泌が増加し、それによって腸管の蠕動が抑制され、便秘になりやすい。非妊娠時でも月経まえ数日は便秘気味になるのも黄体ホルモンの作用による。また妊娠初期には子宮は小骨盤腔内の狭いところで大きくなるためやや窮屈な状態にあり、下腹部違和感、便通不良、下腹痛、頻尿などを感じる場合がある。12週を過ぎると子宮は腹腔内にでて大きくなるのでこれらの症状は軽減する場合が多い。妊娠30週ぐらいになると子宮が腹部全体を占めるようになり、大きくなった子宮の圧迫により満腹感、嘔気、食欲不振などの胃腸症状が出てくる。36週を過ぎると胎児がやや下降し、子宮底も下がるのでこれらの症状はやや軽快する。一般に便秘や下痢が流早産の原因になることはまずないと考えてよい。
Aさんは医師の説明を聞き安心している。基本的には食生活で工夫しているが、それでも3日排便がないとつらいので、寝る前に緩下剤を服用し、翌朝、冷水をコップ1−2杯のんで排便を促している。
平成20年11月11日 日経新聞掲載