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■ 黄体ホルモンの働きについて−妊娠に不可欠、排卵の指標にも−2008. 9. 9

Aさん(43歳)は月経調整のためにエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)製剤の投与を受けている。プロゲステロン服用時にむかつき、体調不良になるため投与の意義について知りたいと持っている。
女性ホルモンのエストロゲンは女性らしさを維持するホルモンとしてよく知られている。一方、プロゲステロンは排卵後の卵巣にできる黄体から分泌されるホルモンだ。本来の作用はエストロゲンによって増殖した子宮内膜を着床しやすい内膜に機能的に分化させる。妊娠にとって不可欠のホルモンといえる。プロゲステロンは時期をずらしてエストロゲンと用いれば経口避妊薬になる。また内膜を機能的に分化させる作用から、思春期や更年期に見られるホルモンバランスの異常による不正出血を止める働きもある。長期的に服用すると内膜組織を分化、変性、萎縮へと誘導するので子宮内膜症治療薬として有効だ。またホルモン補充療法ではエストロゲンによる子宮体癌のリスクを下げる目的で周期的あるいは持続的に併用される。しかし、一方では月経前症候群、月経前不快気分障害の原因ともなる。また薬剤服用によってむかつき、肝機能異常、抑うつなどの副作用の出る場合もある。このようにプロゲステロン製剤は応用範囲が広く通常頻繁に用いられるが副作用のために製剤の選択、投与法の工夫が必要になることもある。最近海外では副作用の少ない製剤が登場した。月経前症候群への応用も含め副作用の少ない製剤として導入が期待されている。

平成20年9月9日 日経新聞掲載