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■ 子宮後屈−単独で病的意味はない−2008. 5.20

OLのAさん(27歳)は検診時に医師に何気なく子宮後屈だねと言われた。また子宮がやや小さいともいわれた。不妊症になるかもといわれた。不安になって近くの産婦人科を受診した。
検診時の医師の何気ないことばで患者が不安を覚えることは少なくない。子宮後屈、子宮の発育がややわるいなどの言い方もその一例であろう。重要なことどういう意味があって、どのように対応したらよいかだ。子宮後屈とは子宮体部の位置が子宮頚部に対して後ろに傾いていることをいう。子宮は固定がゆるい臓器で可動性がよい。子宮頚部に対する体部の傾きはさまざまである。約7割の人が前に傾いており、残りの2-3割は後ろに傾いているといわれる。子宮内膜症や炎症後の癒着によって後屈が固定している場合を除いて、子宮後屈だけでは病的意味は少ない。一方、治療を考慮するような後屈は約数%程度と頻度は決して高くはない。子宮後屈単独では不妊症の原因とはいえず、また妊娠中のトラブルが多いわけでもない。ただ時として月経痛、下腹痛があるぐらいである。以前は後屈を是正する目的で子宮に付着している靭帯を短縮する手術がおこなわれていたが、後屈自体に病的意味がないので今はおこなわれていない。
Aさんには子宮後屈以外に付随する所見がないので心配ないとのことであった。また子宮が多少小さくても月経が順調であればすぐに不妊に結びつくわけではないことも説明を受けた。

日本経済新聞 2008年5月20日夕刊掲載