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■ 妊娠知らず風邪薬 −種類と時期で異なる影響−2007. 8. 7

月経不順のBさん(28)は風邪にかかり、医師に風邪薬をもらって飲んだ。妊娠6週であったことが後で判明、薬剤添付書をみるといろいろ注意点が書いてあるが、どうしたらよいか書いていない。
妊娠中に薬を服用するケースは少なくない。Bさんのように妊娠初期に気がつかずに薬をのむ場合、持病で薬をやめられない場合ならない場合、症状が強くやむなく必要になる場合などだ。薬剤の種類と妊娠時期によって胎児への影響が異なる。受精から妊娠3週末までなら胎児に形態的異常が発生することはほとんどない。妊娠4週から7週末までは重要臓器が発生する時期で影響を受けやすく、薬剤投与は慎重にすべきだ。8週から15週末では性器の分化、口蓋閉鎖に影響する可能性がある。それ以降は胎盤通過する薬剤は本来の作用副作用が胎児におこる可能性がある。妊娠初期の服用で奇形との因果関係がはっきりしている薬剤は多くはない。現在は禁止されているある女性ホルモン剤、血栓溶解剤、サリドマイド、男性ホルモン剤などが該当する。風邪薬に含まれる個々の成分について添付書には「治療上の有益性が上回る場合、あるいは投与しないことが望ましい」との表現となっている。しかし、実際にヒトで奇形が増加する明確な証拠はない。服用後、不安を理由に妊娠を中絶しないよう医師は指導すべきである。Bさんはそ医師の説明に納得、妊娠を継続し、無事に赤ちゃんを出産した。


日本経済新聞 2007年5月22日夕刊掲載