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■ おりもの −早めの診断で有効な治療を−2003. 3. 11

会社員のAさん(28)はここ2週間ほどおりものが増え、においがあり不愉快になっている。恋人と一緒のとき感づかれないかと気になって仕方がない。そのうち治るだろうと思い様子を見ていたが、良くならないので思い切って産婦人科医を受診した。
おりものは医学的には帯下(たいげ)といい。膣や頸管から分泌される粘液を指す。排卵期前後に透明な液の量が増えるが、これは女性ホルモンのエストロゲンの働きによる。一般に膣内は酸性に保たれているので,人体にすみついている常在菌以外の細菌は生きられない。しかし、炎症を起こす菌が入ったり環境の変化などで帯下が増え、それに伴ってかゆみや痛み、灼熱感などが生じることがある。原因として細菌性、カビの仲間のカンジダ、原虫の1種のトリコモナスによる感染、クラミジア頚管炎が考えられる。高齢者だとホルモンの欠乏でおこることがある。症状と所見から原因はほぼ見当がつく。カンジダ膣炎ではポロポロした白いおりものが出て強いかゆみを伴う。外陰がかゆくなることも多い。トリコモナスの場合、ミルクに似たおりものがありちくちくした痒みがあるがカンジダ膣炎ほど症状は重くない。細菌性膣炎やクラミジア頚管炎は特徴的症状がなく検査でわかることが多い。診断さえつけば有効な治療法は決まっているので、長く我慢しないで治療を受けることが望ましい。

日本経済新聞 2003年3月11日 夕刊掲載