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■ 妊娠中のむくみ −それだけで病的とはいえず−2007. 4. 3

A子さん(28)は現在妊娠30週、2週間前から両下肢にむくみを感じるようになり、特に夕方、ひどくなる。血圧、尿検査で異常を指摘されてはいないが、妊娠中毒症が心配でかかりつけの医師に相談した。
妊娠後半期にむくみを覚えることは珍しくない。むくみは目に見えるので妊婦はどうしてもそちらに注意を向けてしまう。しかし、正常妊婦の約30%にむくみは見られ、それのみでは病的とはいえない。むくみは妊娠半期の体内への生理的水分貯留、循環血液量の増加、子宮による静脈還流の減少により、ある程度見られる生理的現象といってよい。その点、誤解をまねくので、浮腫、高血圧、蛋白尿を3主兆とする妊娠中毒症の病名は使わなくなった。妊婦と胎児にとって危険因子になるのは高血圧と付随する蛋白尿の方で、まとめて妊娠高血圧症候群と呼ぶ。むくみだけで妊婦および胎児への危険を過度に警告することは慎まなければならない。妊娠高血圧症候群を発症した妊婦では浮腫の発生頻度は正常妊婦に比べてやや高いが、そのことだけで母児の予後には影響しないこともわかっている。一時期、浮腫の問題も含め、妊娠中の体重増加を厳密にコントロールする試みがなされたが、現在では最終的に体重増加が非妊娠時の11キロから16キロぐらいの間に収まれば、さほど厳密にコントロールする必要はなく、栄養のバランスさえ取れていればよいとの考え方になっている。Aさんの場合も医師の説明と最近の考え方を聞いて納得、いままで通りの生活を続けるつもりである。

日本経済新聞 2007年4月3日火曜日夕刊掲載