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■ 早期卵巣がん −治療法しだいで将来出産も−2006. 1. 17

Bさん(26)は独身女性、右下腹部が痛み医院に行った。右の卵巣がはれており、医師に悪性の可能性もあるので手術するようにいわれた。将来出産したいBさんはそのことを考慮した治療を希望した。
一般に卵巣がんが疑われる場合、卵巣摘出手術を行う。手術中に組織をとって分析する術中迅速検査で悪性と判明したら、医師は卵巣、子宮摘出、大網切除、後腹膜リンパ節(骨盤・傍大動脈)廓清術などを実施する。だが、患者が早期がんで将来出産するために卵巣などの温存を希望する場合(妊孕性温存)、次のような配慮がなされる。術中検査ができないかできても確定診断がつかない場合は患っているほうの卵巣と腹腔内と後腹膜腔に病変がないか調べるためにの組織採取だけで手術を終え、組織を調べなおし、治療方針を決定する。したがって場合により2回手術を受けることもやむ終えない。早期卵巣がんで妊孕性温存が許されるぎりぎりの条件は@病変が片方の卵巣に限られる病期Ta期であるAがんのタイプは高分化型B骨盤内に悪性細胞や病変がないC必ずフォロウアップの診察を受けるーなどだ。Bさんは最初の手術で右の卵巣を摘出、術中検査で悪性と判明し、医師は大網切除、左の卵巣の検索、後リンパ節廓清などを実施した。だが子宮と左の卵巣は温存した。術後検査で高分化型がんTa期と判定され、病変はほかにはなかった。きちんと経過観察を受けることを約束し通院中だ。

日本経済新聞 2006年1月17日夕刊掲載