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■ 乳がん治療後の性器出血 −子宮体がんの恐れ−2005. 11. 15

Aさん(65)は10年前、乳がんで手術とホルモン療法を受けた。最近、茶色いおりもの(性器出血)が続いた。近所の医院で検査を受けたら子宮体がんとわかった。
乳がん治療では手術後にタモキシフェン(商品名ノルバデックス)というホルモン剤を服用することが多い。服用すると子宮体がんになる人がおり、その危険率は服用しない人に比べて2.3倍といわれる。しかしこの事実は近年になってわかってきたことだ。それ以前に治療を受けた人は医師から十分な情報を得ていない場合も少なくない。もちろんホルモン療法が多くの乳がん患者の予後を改善したのは事実で、その治療効果に異論の挟む余地はない。しかし、一方で少しだが子宮体がん患者が増えることも事実だ。一般に女性は少なくとも1年に1回は婦人科で子宮頚がんの検査を受ける。その際に不正出血があれば子宮内膜の検査を受けるべきだ。しかし、年1回の婦人科検診を受けない人も多い。また、検診を受けてもホルモン療法を受けたことや不正出血などの事実を医師に伝えない人が多い。乳がんでホルモン療法を受けた人は子宮体がんの罹患率がやや高くなることを認識し、年1回の婦人科検診ではその事実と不正出血の有無をはっきり医師に伝えて、指導を受けることが重要だ。ちなみに茶色いおりものは不正出血である。

日本経済新聞 2005年11月15日夕刊掲載