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■ 多毛とにきび −卵巣に異常、月経不順招く− | 2005. 6. 14 |
OLのB子さんは5年ほど前から少し毛深くなり、にきびも増えて月経が不順になった。心配になり内分泌専門の産婦人科医にいった。 一般に女性の多毛やにきびは美容上の問題だけではなく、いくつかの疾患に重要な兆候で、主に男性ホルモン優位によりおこる。多くは男性ホルモンを生み出す卵巣や副腎の機能異常、増殖性病変による。一般に体毛増加と分布の変化とともに月経が乱れてくる。Bさんは各種検査の結果、多毛、月経異常、肥満、卵巣の多嚢胞性腫大を主な症状とする多嚢胞性卵巣症候群とわかった。若年女性の月経異常の原因としてよく見られる疾患だ。糖尿病,子宮体がんを将来わずらう危険が普通の人より高い。したがってこの疾患では将来のことも考えた検査、治療計画を立てることが必要だ。しかし、深刻な疾患ではなく、ちょっと気をつけたほうがよいという状態と考えてよい。妊娠を希望しない場合は低用量ピルやプロゲステロン製剤で月経の不順を改善し、男性ホルモンの低下をはかるとともにエストロゲンとプロゲステロンのバランスをとって将来の子宮体がんの危険を下げる。妊娠を希望する場合は経口剤の排卵誘発剤クロミフェン服用で多くは治療可能だ。効果がない場合は注射による排卵誘発や腹腔鏡下卵巣表面焼灼、蒸散などの有効な治療法がある。Bさんは当面月経不順の改善を主体とした治療を受け、結婚後は妊娠を目的とした治療をしようという心づもりだ。 日本経済新聞 2005年6月14日夕刊掲載 |