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■ ヘルペス外陰炎ー急にピリピリ痛み、再発もー2005. 2. 1

OLのAさんは外陰部に突然強いピリピリする痛みを覚え、排尿や歩行が困難になった。変な病気かと心配して近くの産婦人科を受診した。 外陰部に痛みを覚える疾患は真菌性皮膚炎 、接触皮膚炎、擦過傷、バルトりン腺膿瘍などいろいろある。しかし急激な痛みを訴える場合はヘルペス外陰炎が最も多い。突然の急激な発症、ピリピリするような強い痛みが特徴で、外観上、初期には紅斑、やがて水ほう性となり、浅い潰瘍ができ、多くの場合多発する。単純ヘルペスウイルスにより起こる。このウイルスは神経組織に潜伏し、口腔(こうくう)や性器に時々排泄される。性感染症の中では最近増加しており、女性では性器クラミジア感染症についで2番目、男性では性器クラミジア感染症、淋菌感染症についで3番目に多い。性感染症のひとつだが感染の機会と発症時期の関係が明確でないことが多い。ヘルペスウイルスは感染しても排泄がなければほかには感染しないし、初発か再発か、または抗体の有無で発症が異なる。過去に複数のパートナーがいると、原因となったパートナーの特定が難しく、一方で自分が知らないうちに相手に移している可能性がある。治療は抗ウイルス剤でヘルペスウイルスの増殖を抑え、患者の免疫力により治癒に導く。内服薬のほか症状が強い場合には点滴治療をする。7−10日で軽快する。潜伏感染の排除や再発の回避は難しいが、発症時に治療すればよい。

日本経済新聞 2005年2月1日夕刊掲載