[戻る]
■ 妊娠初期の放射線検査 −1回なら胎児に心配ない−2004. 10. 5

主婦のBさんは妊娠8週である。月経が不順だったので妊娠5週のときに知らないでレントゲン検査を受けてしまった。胎児に対する影響について、検査をした医師に相談すると暗に中絶を進められたが、産婦人科ではその必要がないといわれた。
妊娠を知らないでレントゲン検査を受けてしまうことは少なくない。妊婦にとって胎児に対する影響が気になり始めると出産まで心配が続く。このような場合どうしたらよいのだろうか。放射線検査を受けた場合に子宮や胎児にあたる放射線量はだいたい決まっており、受けた検査内容から放射線の総線量は算出できる。一般の胸部レントゲン、腹部レントゲン、胃腸透視(いわゆるバリウム検査)、血管造影、CT(コンピューター断層撮影)、などの診断的検査で1回で危険域に入ることはほとんどない。総線量が一定以下なら胎児への影響はほとんどないといされる。しかし、胎児の異常はほかの要因でも起こるので、絶対ないと保障できるものではない。医師の説明は「影響はほとんどないでしょう」「検査を受けなかった人との差はないでしょう」「万が一異常があっても、それは放射線で起こったとは考えられない線量ですよ」といった表現になる。妊婦、検査した医師双方の不安は理解できないことではないが、このような場合には科学的根拠に基づいて対応することが望ましい。Bさんが説明を受けたうえで、妊娠を続けたことはいうまでもない。

日本経済新聞 2004年10月5日夕刊掲載