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■ つわり −我慢は禁物 無理せず相談−2004. 8. 10

主婦のAさんは妊娠7週である。1週間前からつわりがあり、嘔吐(おうと)を1日中繰り返していた。我慢していたが、そのうち体重が3キログラム減少、尿の量も少なくなり、体に力が入らなくなった。心配になり担当医に相談した。
つわりは妊娠嘔吐ともいい、妊娠6週ごろより始まり、16週ぐらいで軽くなることが多い。全妊婦の50−80%に見られるといわれる。食事の回数を多くして1回の摂取量を少なくする。むかつきやすいにおいを避ける、水分と電解質を確保、気分転換をするーなどで大部分は乗り切ることができる。しかし、症状が強いのに「要は気の持ちよう」などと無理に我慢すると、重篤になる場合があるので要注意である。まれにだが食事量の極端な低下、栄養障害、体重減少などの症状を呈し、治療が必要なことがある。これを妊娠悪阻という。その場合、糖摂取不足のため脂肪を分解してエネルギー供給するようになり、アセトン体という物質が尿中に排泄される。血液の電解質バランスの破綻、腎障害、肝障害に至ることもあり、ビタミンB1欠乏により神経症状を呈する場合もある。Aさんの場合尿中ケトン体という指標が異常値の3+を示した。早期入院してブドウ糖と電解質輸液、ビタミンB1を中心とした補給の結果、重症にいたらず乗り切れた。つわりは妊娠には付き物だが、極端なら無理に我慢せず、すぐに医師に相談して適切な治療を受けることが大切だ。

日本経済新聞 2004年8月10日夕刊掲載