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■ 不正性器出血 −子宮体がん兆候の場合も− | 2003. 11. 12 |
Aさんは49歳で独身、半年前より月経不順で時々褐色のおりものがある。更年期の 生理不順のようだし、下腹痛もなかったが、やはり気になって病院にいった。婦人科の診察を受け、超音波検査と子宮がんの検査をした。 子宮がんには子宮頸部のがんと子宮体部のがんがある。Aさんは頸部の細胞検査は異常なかったが、体部細胞診検査で陽性の疑いがあったので精密検査をした。褐色のおりものは医学的には少量の不正性器出血を意味する。月経が不順で、月経の量が一定でない場合は月経不順と紛らわしい。Aさんの場合、更年期周辺の卵巣機能不全が原因である可能性が高いが、診断ではまず子宮がんかどうか調べる必要がある。子宮頸がんは40−50歳をピークに発症する。検診を受けていれば多くの場合、がんになる10年前に前がん病変としてみつかる。前がん病変の場合、病変部のみの切除で十分である。若い人では手術を受けても赤ちゃんを産むことができる。子宮体がんは50−60歳台、未産者に多く、しばしば肥満、糖尿病などを合併し、欧米型の生活者に多い。一般に不正出血などの症状や危険因子がない場合、子宮がん検診は頚がん検査のみで、両方の検査をする例は少ない。Aさんの場合、精密検査で子宮体がんと診断された。早速病院で手術を受けたところ、初期だったのでほぼ完全手術ができた。Aさんは更年期の出血と思い込んでいたが、思い切って受診してよかった。 日本経済新聞 2002年11月12日夕刊掲載 |